今回の総選挙は、2大政党になってから2回目の選挙だと言う。残念ながら今回は小泉が仕掛けた目くらまし戦術で冷静な政策評価が出来る状況ではない。しかし、2大政党時代に突入した以上、日本も早く政策中心の選挙のあり方を見つけていくべきではないか、というのが今回言いたいことである。
今回は、内容が硬くなりそうでちょっと不本意なのだが、私としてはその必要性を痛感しているので何とか頑張って、選挙における政策評価システムの新しい試みについて、出来るだけ簡明に書いてみたい。
◆政権選択のための総合評価方式とは
まず、選挙に先立ち国民の側から「選挙で争点にすべき日本の政治課題」をリストアップする。これは別に政治的な立場によって左右されるものではないから、参加するのは市民団体、シンクタンク、大学などどこでもいい。場合によってはマスコミによる国民アンケートで決めてもいいかもしれない。
この項の最後にその政治課題の例(*)をあげておく。
次に政党はこれらの項目についての政策の具体案をマニフェストとして発表する。国民にとってこのマニフェストが重要な判断材料になる。(今回も各政党のマニフェストが公表されたのは一歩前進だと思うが、上のような手順を踏んでいないために、総合評価に耐える内容にはなっていないのが残念である。)
国民は各自の優先順位に沿って各評価項目にウェイトをつけ、マニフェストと照らし合わせながら点数化し、合計点で各党を比較する(これが総合評価となる)。その計算式は中学生でも分かるような簡単なものだ。
投票に際しては、これらの項目以外にも政党の実行力や実績などを考慮に入れる人もいるだろうが、総合評価の生かし方は経験を積めばだんだん成熟していくに違いない。
◆より安心な政府を選ぶために
実はこの評価方式は、企業などが高性能で複雑なモノ(システムなど)を競争入札で調達する際に採用している方式を応用したものである。単に価格だけではなく調達する側(この場合は国民)が必要と思う性能を多面的に評価し、できるだけ信頼性の高いもの(この場合は政党)を選ぶのに適している。
私はこの評価システムに呼称をつけて(例えば「政策の総合評価方式」など)、社会教育も含めて早期に導入し定着を図ることを提案したい。
「政策の総合評価方式」にはどんな利点があるのか。まず評価が複眼的になり、より危険の少ない安心できる政府を各人が納得して選ぶことができるようになる。今のように郵政だけの二者択一の選択ではなく、他の重要政策にも国民の目が行き届き、たがをはめることが出来るからだ。
またこれが社会の常識になれば、国民と政党との契約内容もより明確になるし、政党の方も約束した政策を重視するように変わってくるだろう。
こうした総合評価方式は、冷静な判断が追いやられがちな劇場型政治の現代にこそ必要なものだと思う。
◆マスコミの選挙報道にはがっかり
さて、こうした点から言うと、今回のマスコミの選挙報道はなんともいただけない。夜11時台の、普段は見識を売り物にしている大物キャスターには特に失望した。「刺客」だ「注目選挙区」だと、小泉流の戦術に振り回されて、興味本位の底の浅い報道を視聴者の関心がすでに離れている時になっても続けていた。
総選挙はある意味、今後3,4年の日本の運命をゆだねるものである。今回のように目の前の熱気に引きずられてマスコミ全部が同じ方向に走り出したら、対外政策に国民感情が高まった時などどういう報道をするのか。
連日の「刺客」たちを追いかける大騒ぎの中で、一つくらい冷静に多面的な政策評価の必要性を呼びかけるマスコミがあって欲しかった。(これまで書いてきたのも、一つにははこれを言いたかったからです)
*「選挙で争点にすべき日本の政治課題」の例
@財政再建のために必要な国の構造改革
公務員の減員と人件費の縮小、地方への行財政移管、郵政を含む官から民への移管、官僚天下り先の特殊法人の廃止、談合体質の公共事業の見直しなど
A国民的課題への重点的取り組み
憲法改正問題、財政再建のための増税問題、年金改革、少子化対策、子育て教育支援、治安対策、大震災への減災対策、若い世代の就業対策、テロ等の危機管理など
B国際関係、外交的課題への取り組み
対米問題(イラク派兵問題、牛肉輸入問題ほか)、中国、韓国関係(靖国問題)、北朝鮮関係(核と拉致問題)、国連改革(常任理事国)など
C経済活性化のための経済政策
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