「風」の日めくり

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2011年9月25日(日)
カナダからの帰国報告

 カナダ各地50か所ほどから集まった観光担当者と世界のメディア関係者が一対一で面談して情報交換するイベント、「GoMedia Canada Marketplace 2011」に参加して来ました。それにしても、カナダの豊かな自然、豊かな観光資源には驚嘆せざるをえません。しかも、そこに自然環境を生かした、至れり尽くせりの観光施設があります。

◆カナダの観光資源の豊かさ
 中でも印象に残ったのは、ロッキーの山々と、氷河から流れる大河、先住民の文化が堪能できるユーコン
 もともとは隕石が衝突して出来た直径20キロのクレーター上にある東海岸の
シャルルボア。ここでは山裾を通る豪華列車が左右に断崖、滝、大河のパノラマを見ながら走ります。

 そして、世界的に有名なジャズフェスティバル、世界花火審査会など、年間を通して様々なイベントがある
モントリオール。ジャズ祭典の最中は200万人もの観光客で街中が埋まります。それも半分近くはフリーの演奏会。

 また、バンクーバーから車で半日、毎日美しい日没が見られるブリティッシュ・コロンビアのサンシャイン海岸。クジラが泳ぐこの海は豊かなシーフードの産地ですが、その海岸の村々には日本人を含めて様々なジャンルの芸術家が住んでいるといいます。
 白クマがすぐ近くまで顔を見せる北の白夜の街、チャーチル。先住民イヌイットの村もあり、ここにも夏にはクジラが子どもを産みにやって来ます。

 それぞれに、適切なホテル、BB、ロッジあり。夏は自然観察、ハイキング、カヌー、カヤック、ゴルフ、乗馬。冬はスノーモービル、凍った湖面での釣りなどなどの定番の楽しみが。 
 そんな話を
2日にわたって聴取しましたが、旅番組の担当者にとってはよりどりみどりのところでしょうね。

◆人類のテーマに挑戦した博物館
 その中で、私の方はカナダの博物館に興味を持っています。首都オタワの戦争博物館、文明博物館、自然博物館。あるいはいまウィニペグに建設中の人権博物館。特にイベント直前に取材したオタワの戦争博物館では様々なことを考えさせられました。(写真はヒトラーの車)

 「文明と戦争と人権」。人類の共通課題でもある壮大なテーマに正面から取り組んだ興味深い挑戦。これらの博物館については、これから少しずつ「カナダ観光局のブログ」に書いて行きますが、TV番組の企画としても知人のディレクターと構想を練っているところです。(もっとも私はもうディレクターとしてはお払い箱ですが)

 それにしても、カナダ経済の堅実性は羨ましい。街も綺麗で活気があります。それぞれの観光地が知恵を絞った年間通じてのフェスティバルを考え出し、観光客を呼び込む。(雑駁な印象ですが)それはバブルなどではなく、自然を大事にしながら、地域に根差してじっくりと練った計画。それが実を結んでいるように思います。

2011年9月13日(火)
カナダ・博物館巡りに出かけます

 15日から9日間ほど、カナダに出かけますので、しばらく更新はお休みになります。今回は、オタワにある4つの国立博物館(文明、自然、航空宇宙、戦争)を取材してきます。
カナダにはユニークな博物館があって、現在、人権博物館というのも建設中です。

 日本の国立民族学博物館の元館長、梅棹忠夫氏によれば、
「博物館はメディアだ」ということですが、そこからどのような情報が発信されているのか、(カナダ観光局、登録ブロガーとしては)興味があるところです。

 特に、カナダは世界で最も進んだ多文化主義政策を掲げている国。その国の思想を反映しての戦争博物館や人権博物館(来春完成)が何を伝えようとしているのか、その下調べでもあります。

(9/13FBから)
 先に「原爆投下 活かされなかった極秘情報」(Nスペ)について書いたけれど、広島、長崎の原爆投下が迫っているときに日本政府が何をしていたか、ということをもう少し知る必要があったかと思っています。
 「聖断 天皇と鈴木貫太郎」、「宰相 鈴木貫太郎」などを読むと、日本政府はその前後、戦争終結派と戦争継続派(陸軍)とが国家存亡をかけた(実際は天皇制護持を賭けた)連日の暗闘を繰り広げていて、政府は原爆から国民を守るどころではなかったということが分かります。残念ですが。
 このような歴史も繰り返し伝えていく必要がありますね。日本こそ(壮大な)戦争博物館を作るべきだと思います。


 もう一つ、カナダにはヨーロッパ印象派の影響を受けて1920年代に活躍した「グループ・オブ・セブン」という画家集団がいます。オタワでは国立美術館も訪ねますので、その幾つかに出会う予定です。
 一昨年、トロント近郊にあるマクマイケル美術館に行きましたが、そこもこの「グループ・オブ・セブン」を中心とした美術館でした。カナダの大自然と共鳴した、その独特な絵画群についても一度ご紹介したいと思います。

 その後、アルバータ州の州都エドモントンへ。気温は6度から20度ということですので、セーターがいりそうな気候。
 東部の紅葉はもうどんどんメープル街道などへのツアー予約が入っている頃ですが、こちらはどうか。更新遅れをとりもどすべく月内にはご報告します。

2011年9月3日(土)
過去を振り返るということ

 しばらく「メディアの風」の更新をさぼって月刊ジャーナリズムという雑誌に「NHKは原発とどう向き合って来たか」というタイトルで原稿を書いていました。400字で25枚。3月11日に、恐れていた原発事故をとうとう目の当たりにした時の衝撃をきっかけにして、私が関った全部の原発番組を振り返った内容です。

 今回の事故が起きた時、自分の原発に対する今の考えと過去の番組経験との間に、きちんと折り合いをつけておかなければと思っていたので、これはいい機会になりました。色々と反省もありますが、過去を振り返ることで少し整理が出来たと思います。

◆過去を振り返るということ
 さて、今回はその
「過去を振り返るということ」についてです。去年の暮、完全リタイアを果たした後の心境は「すべてはこれから」。自分の過去など一切振り返らずに前にあることだけを見て楽しみながらやっていく。そういう心境でした。
 ところが最近、どうもそう言う感じばかりでないのです。自分が生きて来た66年という歳月が、それなりの長さで迫ってくる感じ

 今年の夏、番組で大空襲や原爆の生々しい証言を聞いた時のこと。その悲惨な事実が(わずか3カ月とはいえ)自分がこの世に生れていた時のことであるのになぜか愕然としました。
87日のFSから)
 『ETV「ことばの力」。86歳になる歌人が、戦争中の空襲(4月14日)で東京の満開の桜が熱風によって赤く染まりやがて炎上していく様を語っていました。兵士であった彼は、その後多くの焼死者の片づけを修羅のようになって続けたと言います。昨日のNスペでも広島、長崎で焼けただれて死んでいった人々を看取った、生々しい体験談が出てきました。66年前、私が生まれた年のことです。』

◆戦争がないだけ恵まれていた?
 幼少時の貧しい時代、高度経済成長の時代、そしてディレクターとして世界を見聞きした時代。その後、日本は混迷の時代を迎えていますが、それでもこれまでの自分の人生は、戦争を経験せずに済んだだけ恵まれたものだと単純に考えて来ました。

 しかし、3.11の後ではそうではない。この先、いつ(東海、東南海、南海地震などの)大災害が起きるとも限りません。それに、考えてみれば、ほんのちょっとさかのぼっただけで、悲惨な戦争がありました。かすっていたようなものです。
 つまり、自分のこれまでの人生はたまたま、そうした大きな不幸と不幸の節目の間にあったにすぎないのかも知れない。しかし、66年と長くなると、そのどちらにも触れずに生きることは難しいかもしれない。3.11以後はそんなふうにも思うのです。

◆心の変化を楽しむ
 過去を振り返らず、未来の楽しい可能性だけを見て生きる。定年後の生活をそのように単純に考えていたのですが、このように、自分の生きて来たそれなりの長さを思い知るようになりました。
 何故か、小学校からの下校時、普段は
20分もかからない通学路を道草を食いながら2時間もかけて帰った時の記憶などが蘇って来るのです。
 それだけ、残りの時間が少なくなってきたのかもしれませんが、この心の動きを今しばらく楽しんで見ようと思います。

2011年8月25日(木)
日本の中小企業の底力

 「是非一度、見て確かめて欲しい」とFさんに誘われて、栃木県岩船町にあるその研究所を訪ねました。会社の名前は「グローバルエナジー」。従業員7名の小さな会社です。
 訪ねてみると、敷地の中に沢山の風力発電機が並んでいます。垂直軸型の風車やプロペラ型の風車です。研究所の中にもものすごい数の試作品が。これには正直驚きました。

 この会社のオーナーが並外れた情熱を傾けて研究して来たのは、いかに効率よく風を捉まえる風車を作るかということ。これまでとは全く違った発想をもとに、特殊な断面を持つ高い効率の風力発電機や、これが空を飛ぶのかと思うような翼のない飛行艇などを開発してきました。(写真は会社のHPから)

◆これまでと全く違った発想から?
 まず、研究所の中で開発者の鈴木政彦会長(写真)から、熱のこもった話を3時間ほど。もともとはレーシングカーのボディ設計をしていたそうですが、風力発電の研究に転進。水鳥が着水する時に羽根の先端を内側に折り曲げることに着目した鈴木さんは、数々の試作品を作って実験し、風を最も効率よく捉える先端の傾きを見つけ出したと言います。

 さらには、水の中を猛スピードで泳ぐマグロの体型から発想した、翼のない飛行艇も。鈴木会長いわく「水の中でも空気の中でも原理は同じ」だそうで、空中を自由自在に飛び回る飛行艇のユニークな形を見つけ出しました。
 その空気力学や流体力学の理論は、正直言って私には難し過ぎましたが、百聞は一見にしかず。会長の話の後、開発した風車の性能実験、そして近くの川の河原での飛行実験を見せてもうことに。

◆翼のない飛行機が空を飛ぶ
 風車は垂直軸型とプロペラ型の2種類。僅かな風で回り出し、風が止まっても回り続ける不思議さ。プロペラ型の風車は、先端が広がる形で、よく見る3枚羽根とは違う5枚羽根。風車の欠点とも言える風切り音も殆どなく静かです。

 驚きは長さ2メートルほどの飛行艇。マグロが3本並んだような機体で羽根がないのに、その両脇のマグロの下に風をうまく抱え込むのだそうです。僅かな滑走であっという間に上空に。空中でヘリコプターのように止まることも出来れば、プロペラを止めて滑空もできる。(写真は会社のHPから)

 それは驚きの連続でしたが、正直頭の中ではまだ十分消化しきれていません。いずれにしても、独創や発明は大企業からというより、こうした中小企業から生まれることが多い、ということが妙に納得できたように思います。
 今求められている自然エネルギー技術も、いつもテレビに出て来るあの巨大な3枚羽根の風車ばかりでなく、制度や資金の仕組みを変えて、こうした発明をどんどん育てて行けばあっという間に進むはずです。

 日本の中小企業の底力を感じた日。この会社は、他にもこの原理を応用した様々製品を開発中ですが、詳しく書くと企業秘密に触れる恐れもあるので、取りあえず風車と飛行艇については、動画を見られる会社のHPをご紹介します。

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