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「野分(台風)沸く日本近海落ち着かず」。迷走した台風24号をはじめ、今年は日本近海で“沸くように”次々と台風が発生し、 それに刺激された前線が、日本各地に過去類を見ない大雨を降らせている。一方、熱波が襲ったヨーロッパでは各地で大規模な山火事が発生し、フランスでは52日も続いた異常高温で死者が7300人も出たと言う。氷河が溶けて発生したネパールでの大規模土石流も含めて、こうした極端な現象は、もちろん地球温暖化のせいだが、それを地球規模で俯瞰すると温暖化の進行が憂慮すべき段階に入っていることが浮き彫りになる。
◆暴走し始める地球の気候変動
Nスペ「地球超解析 宇宙から解く熱波と豪雨の謎」(8/26)でも言っていたが、日本近辺は温暖化の影響が世界平均の2倍のスピードで進んでいる。北極では太陽熱を反射して来た氷がなくなるのは時間の問題だし、海水温の上昇による水蒸気や永久凍土から漏れ出すメタンガスなども温暖化を加速させる。国連環境計画(UNEP)は、パリ協定(2015年)が目指して来た+1.5度は、あと数年で突破されると警告した。これは、一度この一線を越えてしまうと人間の努力では地球の気候を二度と元に戻せなくなる転換点(tipping point)を意味する。
+1.5度を超えると、地球の気候が暴走し始める。地球温暖化については、過去のコラムで何度も取り上げて来たが、これを無視するトランプをはじめ、世界は救いがたい状況だ。これは、もう若い世代の危機感に委ねるしかないが、私個人としては、石油文明を変えるかもしれない「アンモニア革命」(西林仁昭、東大教授)に一縷の望みを抱いている。常温常圧で簡単に作れて、エネルギーとして使ってもCO2を出さない。死ぬまでに、その実用化が見られるかどうか。それをかすかな希望としながら、この先の急激な温暖化に耐えて行くしかない。
◆人物象に触れる断片を拾い集める
さて、新聞の切り抜きファイルから見えて来る「時代の構造的変化」そのAだが、身近な所で言えば、(思い込んだら命がけ的な政策に突き進む)高市政権が何をもたらすかである。何しろ高市は、「日本列島を強く、豊かに」、「日本はインド太平洋の輝く灯台として頼りにされる国になれる」などと呪文のように唱えながら、「行き過ぎた緊縮財政」を目の敵にして、「責任ある」はどこかに置いて「積極財政」に走り、青天井の概算要求で140兆円超の膨張予算を計上させている。消費税減税に異を唱えた財務省官僚を左遷するような恐怖政治も平気でする。
こんな高市が日本をどこに連れて行くのか。本人に確固とした国家観や主主義張があるのかないのか、意識的に会見やインタビューを避けているために、なかなか捉えにくい。そこで、人物象に触れる断片(新聞、雑誌)を拾い集めてみた。まずは、「かつてなく日本の未来が心配だ」という田原総一郎(92歳)の高市評である。「(高市は)ただただ『日本は強い国であらねば』と思っている。独断と偏見で物事を進める。人の意見を聞かない。とても危うい」(8/31毎日)。異論は高市にとってストレスでしかないために、人を寄せ付けず、結果、孤独になる。
◆中身のない長文の投稿を繰り返す
人ともめったに会食せず、官邸にこもる高市は連日、中身のない長文のX投稿を繰り返している(「選択」9月号)。どこかに批判的な記事が載ると、それに対する自己弁護を繰り返す。一言激励したりすると、すぐに長文のメールが届くとも言う。要するに、高市はどこかの大統領と同じ、自己愛が強くて、批判には過剰な拒否反応を示すが、褒められれば嬉しい。「お世辞でもいいから、私を褒めちぎって」と維新代表の吉村洋文に言ったそうな。「肝心なことには一言も触れず、膨大な文字数の中身のない投稿をひたすら繰り返す」(同)。大丈夫だろうか。
日本が始めた先の戦争について、「私自身は、当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもない」(1995年、国会)と言った高市は、終戦の日のあいさつで「戦争の惨禍を二度と繰り返させない」と、戦争の惨禍を招いたのは、どこかよその国のような言い方をして問題になった。「私は反省などしない」がモットーの彼女は謝れない。従って、台湾有事発言で中国の怒りを買ったことについても身動きが取れない。インドに出かけた時も、周囲に「何をしても批判ばっかり。もう外交なんかせえへん」とぼやいたそうだ。
◆国家像を持たない首相の国の行く末は?
従来の首脳は、夏の国会休会中に海外に行って外交をしてきたが、インド以来、高市の外交はぱったりと途絶えている。これでは、中国が積極的に周辺諸国を取り込んでいる動きに遅れるばかり。日中関係の冷却で経済活動に支障を来している人たちにとっては難儀な話である。もっとも、高市は中国からの反発が、自身の保守支持層に受けると思っているフシがあるから厄介だ。さらには、高市が「首相を9か月務めて感じることは、我が国が向かうべき方向性とか、国家像を考える時間を取ることが簡単ではないということだ」(7/27会見)と述べたことである。
これについて井上寿一(学習院大教授)は、「(明確な)国家像を持たない首相の国の行く末はどうなるのか」と心配する。井上は、高市が90年代にテレビのキャスターに登場した頃の話として「バブル期特有の派手なファッションに身を包むギャルだった」、「自分を売り込むのに必死」(森喜朗)などを引き合いに、これらの時代の人々が私利私欲に走り、「新しい日本の国家像」を描くことが出来なかったとする。そんな経歴を経た高市が、戦前回帰的な価値観をまとい、年寄りたちに取り入って、思いもかけず一強状態の首相を務め、国家予算を握る。
◆実力を越えて膨らむ投資の行方
高市が目指す「積極財政」のもと、異例の青天井で 140兆円を超えた概算要求は、さらに膨らむ予想だ。年内の安保三原則の改定で見込まれる防衛費増の財源をどうするのか。消費税減税分の年間5兆円をどこから持ってくるのか。国債(借金)の発行を抑えられるのか。日本は国債の金利上昇(価値の低下)に耐えられるか。日本の膨大な債務に加えて、財政規律を忘れた膨張予算に、国際市場はどう動くのか。経済と財政に疎い私には良くわからないが、国家予算が決まる年末から年明けにかけて、まだ一波乱も二波乱もありそうな高市政権である。
時代の変わり目で言えば、もう一つ。政権が力を入れる「戦略17分野」(AI、半導体、情報通信、防衛産業、コンテンツなどなど)に、官民合わせて14年間に370兆円を投資するという計画がある。過去、政治主導の成長戦略が成功した例はないのに、これに、カネの匂いを嗅ぎつけた人々が群がり始めている。政権はこうした投資話で株価が上がればいいと考えているかもしれないが、それは一部の富裕層を潤すだけで、結局は経済的格差による社会の分断と、分断を反映した政治につながる恐れがあるとの指摘もある(待島聡史、京大教授、8/2毎日)。
◆「早苗押し」のような空虚な支持率
世界の多くの国がそうであるように、日本も格差や分断を前提にした政治を受け入れて行くのか。借金に等しい、見せ金のような投資で「強い国」を追い求める高市の経済政策がどうなるのか。今回は、新聞や雑誌の断片記事から高市の実体に迫ろうとしたが、何しろ現役記者でもないので、ジグソーパズルがなかなか埋まらない。翻って、現在のメディアはどれだけ「高市の実像」に迫ってくれているだろうかとも思う。それがしっかりしなければ、いつまでたっても「早苗押し」のような空虚な支持率が続き、それが国の運命を決めてしまうかも知れない。
以上、2回にわたって新聞の切り抜きから、時代の変化に関わる内容を取り上げて来た。まだテーマはありそうだが、一方で、句会への初参加や、家族や友人たちとの楽しい会話のような、身近な「近況報告」もぼちぼちと書いて行きたい。
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