民進党議員に提言のようなものを送ったいきさつについては、前回に書いた。@どういう党を目指すのか、A党のビジョン作りと2段構えの政権戦略だったが(「メディアの風」コラム5/14)、後編の今回はB具体的政策、C目指すべき政治家像について書いた。その後、送った相手から「賛同する点が多く興味深く読ませていただきました」旨の返事が来たが、参院選挙を前にして民進党にはじっくりと勝てる戦略を練ってほしいと思っている。
いま巷では、衆参同日選挙はないとの観測が強まっているらしいが、首相は6月1日の会見で正式にダブル選挙と消費税増税について態度を明らかにするという。いずれにしても7月の参院選挙は、これから数年の政治状況を作っていく上でも大事な選挙になる。安倍一強政治による間違った方向への暴走に歯止めをかける意味でも、民進党を中心とした野党には頑張ってもらわなければならない。以下、提言の続きだが、まずは具体的な政策を7つあげておいた。
◆B具体的政策
1)アベノミクスに代わる経済政策
金融政策に頼るアベノミクスは挫折した。恩恵があったとしても、一部の大企業と富裕層のみ。その一部の富裕層の余禄が、国民多数に滴り落ちる「トリクルダウン」は起こらない。無理を重ねて経済成長の幻影を追うアベノミクスは害(副作用)あって益なし。貧困層も含めて国民大多数の中間層を豊かにし、国民全体に活力を持たせるには、経済成長に頼らない新たな価値観による経済政策が必要。また、行きすぎた累進課税の軽減を見直すなどの社会的公正のあり方も検討する。(*累進課税の見直しで得られる財源は?)
2)「縮む日本」を直視したダメージコントロール
必ずやってくる高齢化と人口減少の近未来日本の深刻な現実(2025年問題、2030年問題など)。これを直視し、そのダメージをいかに和らげソフトランディングを果たすかという「ダメージコントロール」こそが、これからの日本の最大課題の一つになる。持続する豊かな日本を次世代に残すために、国民全体で取り組んで行く。政策としては、道州制も含めた地域主権、地域経済圏の試み、農業の活性化、子育て支援、非正規雇用の若い労働者の正規雇用化など。
3)原発に頼らないエネルギー政策
世界最悪の地震・火山列島である狭い日本において、再び事故が起きれば国と民族が滅ぶ。溜まる一方の使用済燃料の処理、廃炉技術も未確定。日本の原発に未来はない。これに見切りをつけて、得意のイノベーションで世界をリードしながら、次世代が安心して暮らせる新エネルギーの開発に取り組むことこそ、原発事故の体験国としての日本が取るべき道である。
4)外交とセットにした専守防衛の防衛政策
核保有のカルト独裁政権の北朝鮮、領土問題を抱える(覇権主義に駆られる)中国、ロシア、韓国を隣国とする日本の防衛政策はなかなかに難しい。しかし一旦、国家間戦争始まってしまえば、双方にとって破滅しか生まない現代において、戦争はあらゆる方策を講じて避けるべきものである。日米同盟の変質を慎重に見極めながら、日本の「外交・防衛ドクトリン」を構築する。その時に重要なのはアメリカに引きずられる集団的自衛権ではなく、専守防衛と個別的自衛権だろう。
5)守るべき基本理念に基づく憲法の議論
国家を上位に置き、国民の権利を制限しようとする自民党の国家主義的改憲案については厳しく批判して行く。同時に、(変えないことも含めて)現憲法が時代に合っているかどうかを議論して行くのは必要。その時には、「日本国憲法が有すべき基本理念」を再確認していくことが重要になる。国民主権、象徴天皇、基本的人権、専守防衛、平和希求などの基本精神を分かりやすく書き変えたり、時代に合わせた項目(*)を付加したりする。*例えば、教育の全面無償化、道州制を明記した統治機構改革、憲法解釈を判断する憲法裁判所の設置(おおさか維新)なども参考に
6)世界に開かれた日本の推進
グローバル化が進む中で、日本は地域と言えども世界と無関係には生きて行けない。日本が取り組む平和構築の報酬として、ローカルがグローバルにつながって行く「グローカル」を積極的に推進して豊かさを得て行く。モノ作りと貿易、観光立国、高品質な農業、国際化する医療と介護、教育、エネルギーも含めた科学技術etc。こうした分野で、日本の都市部はもちろん、地域も創意工夫で国際化を進め、世界との結びつきを強めていく。
7)地殻と大気の大乱時代のリスクに備える
3.11以降、日本の地下は大乱時代に入っている。必ずやってくる大地震や火山噴火に備えるための被害軽減策が急務である。そのために、アメリカのFEMA(合衆国連邦緊急事態管理庁)に匹敵する「災害管理庁」(仮)を設置し、防災・減災のあらゆるノウハウと人員を結集すべきである。同じように、地球温暖化の防止策や適応策においても、実効ある炭素税の導入を含め世界をリードして行く。
(ここには問題意識というか、政策の骨子だけを書いてみた。もちろんこれまでも各方面で指摘されてきた内容であり、具体化には専門家も含めた研究と肉付けが必要になる。特にグローバルに展開される新自由主義的経済がもたらす弊害については、心ある思想家、経済学者も警告を発しているところだが、経済成長を唯一の指標として無理を重ねる現政権の思い込みは危ない。むしろ回り道でも社会各層が支え合う共生社会で安定した社会を作る方が、“結果としての経済成長”を生むといった指摘もある。格差が様々な社会的軋轢を生んでいる日本においては、是非、検討してもらいたいところである)
◆C目指すべき政治家像
○永田町の政治家が陥りやすい権力欲、過度の上昇志向、目立ちがり屋、内容のないパフォーマンス、エリート意識、上から目線、といった無意味な性癖を削ぎ落し、いま国民が何を望んでいるのかの庶民感覚に敏感であり、国民の声なき声に寄り沿いながらやるべきことに挑戦する政治家であってほしい。国民と国家のために献身する高い志と真心(赤心)を持ち続けて欲しい。
○常にアンテナの感度を磨いて発信力を高めてほしい。国民感情(感覚)と波長を同じくしながら、国民の心に届く力のあるメッセージを発信しなければならない。例えば、安倍政治の危険、弱点、欺瞞、空虚を突く「寸鉄人を刺すような」創造的表現を国民に届けられるようになってほしい。
国会論戦においても、(例えば格差論議などで)都合のいい印象論や邪推・勘繰りを排し、しっかりしたデータに基づいて、安倍政治の本質と弱点・急所を突く厳しい論戦を展開して欲しい。
○ブレーンを持つこと。現在は過去の経験だけでは乗り越えられない時代の転換点(入り口)にある。そのため、これからの政治は従来の価値観や政治家としての直感だけではやって行けない。穏健な改革を続ける「中道保守」に共感する専門性の高いブレーン集団を、党としても個人としても集める必要がある。政治理念、憲法・防衛政策、経済政策、外交政策、社会福祉の在り方、教育政策、科学技術政策など、ブレーンを使いこなしながら、(手順も含めて)安倍政治に対する対抗軸を打ち出して欲しい。
○適切な歴史認識を持つこと。一方で、過去の歴史に学ばない政治はあり得ない。特に明治から戦前にかけての軍国主義の台頭、戦争へのプロセス、戦後のGHQ占領政策の功罪、高度経済成長とバブルの崩壊、経済成長が望めない少子・高齢時代の変化など。同時に冷戦終結後の世界認識も必要。これらの歴史認識の中で新たな日本の価値観、羅針盤を見つけ出す作業が必要になる。そうした大局観と歴史感覚を持った政治家であってほしい。
(最近、国会議員や自治体首長たちの唖然とする行動が問題になっているが、ここでは、政治家は何のために政治家を目指したのか、そのためにはどういう政治家であってほしいかを書いた。特に、反知性主義が横行する現状の中で、踏みとどまって初心を忘れず、政治の理想を追い求める政治家であってほしいと思って書いてみた。これがラブレターの所以である)
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