人工知能の生成AIが登場して2年余り。時折、それがどこまで進化しているかを探るために対話をしているが、その進化のスピードは驚異的と言っていい。学生たちが論文の作成にも利用しているというので、今回はAIのコラム作成能力がどの程度のものなのかを試してみた。テーマは原発問題。今年3月に決定される政府の「エネルギー基本計画」にも見るように、「原発の最大限活用」への転換には、推進側による原発の建設費高騰の無視や再生エネへの古い思い込みをベースにした、安直で一方的な論理が使われていて、腹が立っていたからでもある。
例えば、「安定発電と脱炭素 原発以外にない」(12/5朝日)などと、答えている遠藤典子(早大教授)は、これからAIで電力が爆発的に増える、再生可能エネルギーは不安定だし、蓄電池などのバックアップが必要、経済安全保障には原発が欠かせない、などと断言する。いかにも政府関連の諮問委員に名を連ねる学者らしい言い分だが、こういう主張も含めてAIはどのように整理し、判定を下すのか。有料版のGPT4に最近の原発回帰の動きなどの背景を踏まえさせてから、幾つかの指示(これが大事)を与えながら、最終的にコラムを書かせてみた。
◆どちらに理があるかを判定させ、コラムを書かせる
AIに指示した手順は以下のようなものである。まず、「原発の最大限活用」に転換した政府の動きと、それに対する議論などの背景説明を行う。これは客観的で丁寧なほうがいい。これを踏まえた上で、原発推進側があげる論拠を項目別に列挙させる。同様に、脱原発側があげる論拠を列挙させる。それぞれの論拠には、より詳細な理由が挙げられているが、それらを互いに対比できるように整理させ、その上で、どちらに理があるかをAIに判定させる。この判定には、国民大多数の立場からの判定と、政府・企業側からの判定の両方を対比させてみた。
その判定は当然真っ二つに分かれるが、さらに、 これからの日本にとってどちらに理があるかをAIに判定させると、AIは論拠を示しながら最終的に脱原発に70%、原発推進に30%の理があると判定した。では、この判定が正しいとして脱原発は実現可能なのか。2つの視点からAIに答えさせた。一つは5年から10で脱原発する場合のロードマップを作ること。もう一つは、国民の合意を取り付けて行くための民主的な手続きについてである。AIは各指示に瞬時に答えを出して来るが、詳しい途中経過を載せる余裕がないので最終コラムだけを載せる。
◆AIコラム。「原発最大限活用」論を問い直す:未来を支える選択とは
1. 原発政策の転換点と課題
2022年、岸田政権が「原発最大限活用」を掲げたとき、多くの国民はその言葉に驚きを隠せなかった。2011年の福島第一原発事故以来、日本は脱原発を視野に入れたエネルギー政策を模索してきた。それが突然の方針転換である。
政府の説明では、エネルギー価格の高騰や供給の安定性が理由として挙げられている。しかし、原発の再稼働や新規建設は本当に私たちの未来を支える選択肢なのだろうか。福島の教訓を無視して同じ道を歩むことに、果たして正当性はあるのか。この問いに答えるため、まず政府が掲げる論拠を検証してみたい。
2. エネルギー安全保障の幻想
政府が最も強調するのが「エネルギー安全保障」である。日本は化石燃料をほぼ全量輸入に頼るため、国際情勢に左右されやすい。そのため、国内で安定的に発電可能な原発の活用は合理的だという主張である。
だが、この論理には見過ごされがちな点がある。再生可能エネルギー(再エネ)の技術進展だ。現在、蓄電池やスマートグリッド技術が普及し、太陽光や風力発電の不安定性を補う仕組みが整いつつある。ドイツやデンマークの事例を見れば、再エネだけでも十分なエネルギー供給が可能であることが証明されている。
さらに、日本は地理的条件に恵まれた国である。洋上風力や地熱発電といった地域分散型のエネルギーは、安定供給と地元経済の活性化を同時に実現できるポテンシャルを秘めている。原発に依存せずとも、エネルギー安全保障は達成可能なのだ。
3. 原発の隠れたコストとリスク
原発が「安価なエネルギー源」として語られることが多いが、それは見かけだけの話である。建設費用、運転費用、廃炉費用、さらには放射性廃棄物の管理コストを含めると、その負担は莫大だ。万が一の事故が起きれば、損害額は計り知れない。実際、福島第一原発事故の影響で、廃炉や除染にかかる費用は現在も膨張し続けている。
一方、再エネは初期投資こそ必要だが、燃料費がゼロで運転コストが低い。長期的には、国民負担を減らす選択肢となる。また、温室効果ガス削減の面でも再エネは圧倒的に優れている。ライフサイクル全体で見た場合、原発のCO₂排出量はゼロではない。気候変動対策の視点からも、再エネへの移行が必要である。
4. 廃棄物と倫理の問題
原発政策の最も深刻な問題は、放射性廃棄物の処理である。安全に管理するためには数万年単位の時間が必要であり、そのコストやリスクは未来世代に押し付けられる形となる。一方、再エネの廃棄物はリサイクル可能な素材が多く、廃棄物管理の負担が比較的軽い。この違いは倫理的観点からも無視できない。
福島の教訓から、原発が地域社会や環境にどれほど破壊的な影響を与えるかは十分に知られている。そのリスクを再び冒す必要があるのか。答えは明白だろう。
5. 脱原発への現実的な道筋
では、脱原発を実現するためには何が必要なのか。まず、老朽化した原発から順次廃炉を進め、新規建設を凍結する必要がある。これと並行して、再エネの普及を加速させる。蓄電技術やスマートグリッドの導入、地域分散型エネルギーの推進を通じて、電力供給の安定性を確保することが可能である。
また、国民的議論を深めるため、討論型世論調査を全国規模で実施し、脱原発の合理性を多くの人に理解してもらう取り組みが重要だ。自治体や地域社会が主体となるエネルギー政策を構築することで、中央集権的な意思決定構造を見直すべきである。
6. 結論:未来を支える選択を
原発政策は短期的な安定性を提供するように見えるが、その影に隠れたリスクとコストを無視することはできない。一方で、再エネは技術の進展とともに、現実的な選択肢としての地位を確立しつつある。未来世代のため、そして福島の教訓を活かすためにも、脱原発こそが持続可能な社会を築く道筋である。今こそ、日本がその方向に舵を切る時である(終わり)。
◆奮起すべきは人間の側
コラムの内容は例によって優等生的ではあるが、幾つかの段階的指示にAIが出した回答はコラム量の20倍近くになる。しかも、この大量の文章をAIは2分もかからずに吐き出して来る。こちらが質問を考えて入力する時間と合わせて、全体で30分程度の作業だった。これなら学生が論文にAIを使うのも分かる気がする。一方で、「熟議なき原発回帰」(12/26毎日)などとも言われる政府方針にどう脱原発を迫って行くのか、現実は厳しい。エネルギー政策を議論する政府の審議会は殆どが推進寄りのメンバーで、議論になっていないからだ(同記事)。
欧州ではコラムが引用したように、無作為抽出の国民による政策討議のための市民会議が機能しつつあるとも言うが、民主主義の理念がどんどん薄れて来ている今の日本で、そうしたことは可能だろうか。国民的議論が分かれるテーマをどう正しく導くのか。こればかりは、AI任せにせず人間側の不断の努力が必要になってくる。私の方も次回からは、自分の頭で考えたコラムを書かなければ。
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